工数を増やす情報管理

最近、仕事管理上の一つの大きな変化は「情報の取り扱い方」が極めて厳しくなったことだ。(ここで例を載せたいが、割愛)

いずれも、情報が「物理的にどのように動いたか」を記録に残し、顧客の情報を大切に扱っている事を担保するため仕組みである。
しかしながら、システム上で動いた情報は自動で記録を残すことができても、「アウトプットされた紙媒体がどう動いたか」を記録に残すのは、作業する側からすれば、まさに仕事の工数が増えることを意味する。
この10年、決済のハンコ数は減ったが、(意思決定とは別次元の)情報取り扱いという別の意味での承認のハンコが増えている。

こういった工数増加に対して「こんなに手間がかかるのでは仕事にならない」というのが私も含めた周囲の初期反応であった。しかし、あまりにも徹底したルールだと「会社としての意思」をかなりの重みをもって受けざるを得ないこともあり、社内での格段の抵抗感はないというのも現状である。ただ、推察するに、どこかの部署で、手間のあまりの煩雑さを理由として、現実のルール運用面で、「まあここはいいでしょう」といった形での形骸的運用が行われる可能性も決して否定はできない。

一方、世の中の動きを見ても、コンプライアンス、個人情報保護、内部統制、情報セキュリティーの国際基準(ISO27001)の確立等、言葉は違うが、つまるところ、一つの仕事を完了させる際の手間(工数)を増やすルールがどんどん増えている。基本的な社会トレンドとして、企業の情報の取り扱いを厳しくする動きは逆戻りし得ないだろう。そして、どこかの企業の社員が起こした「大きな事件」がその動きをさらに加速させるという循環に入っている。
そこで感じるのは、複雑な要求、それに応えるための複雑な情報、そしてその敏感な情報を管理するための複雑なルールが増える方向にある中で、同じような価値を顧客に届けようとすれば、以前にも増して手間がひとつふたつと増えていくということは必然であるということ。あまりに多いルールに内心面倒と思う時は、そう自分を思い聞かせようと思う。