構造的な問題と循環的な問題

「社長と会長での30年間の過去の経験が役に立たない」とスズキの鈴木会長に言わしめるほどの今の経済環境。現役の経営者たちにとっては、「いつか見た風景」ではないことは確かなのかもしれない。つまり循環的な問題ではない気配がする。
今回の景気悪化の局面は経済指標の「落ち方」が急激すぎる点が特徴的。あったはずの需要が一気に消えた、というのが的確な表現かもしれない。トヨタは前期の最高益から一転、史上初めての営業赤字。あまりにも急激な変化なので、景気循環的な動きとして捉えることには無理がある。おそらく、極めて構造的な問題。
ではどういった「本質的な構造」がはげ落ちて今の状況になったのか、そして、はげ落ちた後の業界の収益構造はどのようになっていくのかを理解するにはもう少し時間が必要な気がする。
ただ、へばりついたように残っている構造、そして今回も表面化した日本製造業における業界の収益構造は「外需を輸出が支えている」というもの。
①外需に占める輸出の割合の高さ
②本社が日本に登録されていること
この2つは「対ドルでの円高」を介して事業業績へのダメージの大きさへとつながっている。①は海外直接投資を通じて、②は本社の海外移転を通じて、円高によるダメージを解消できる(理屈の上では)。実践的に難しいのだか、特に②は税制の相対的な高さも併せて考えなければならないような時代になってきたのかもしれない。雇用とプライドが障害になるのは必至なのだが。
①の海外直接投資として、円高を利したM&Aというのが上げられているが、自身も当初はそう思うと思ってはいたのだけれど、世界中の企業業績がこれだけ痛んでいる中で、企業評価というのがまっとうに出来るのかという課題は有る上に、PMIをやっていくことの一抹の不安もある。