『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

著者は生まれたときにカネがない状態で、「貧困は暴力を生む」ことを目の当たりにし、その環境を去り、カネを稼ぐ中で、「最下位の人間には最下位の戦い方がある」と戦略の本質を喝破、その戦い方においては「自分の得意なものと限界点を知ること」と心得、さらに一稼ぎするには商品の差別化が必要と実際の漫画家としての仕事の中で実践していった。

そして、著者はギャンブルやFXでカネを相当失った模様ながら、様々な国の貧困の状況を実際に自分の目で見て、人が人であるために人に必要なのはカネ以上に「働く場所」と。
また、「カネ」を手で触る機会は大人になると失われていくといった論旨や「損をしたくない」という思考癖が人間関係に及ぼす影響、さらには職業を考える上でのキャリア論的考察も内包していて、装丁や書名からは想像の着きにくい、お腹が一杯になる良書。

投資と子どもへの教育との関係というのは、なんだか一っ飛びしている感があったが、この本はちょうどのその間にすっぽり入る感覚。家でいえばメザニン(中二階)にあたる。

著者のいう、決して振り返らない力は、恐らく覚悟ともいえるのだろうな。